東日本大震災に際して、房総半島でも津波警報が解除されませんでした。
館山病院では停電でエレベーターが使用できない中、1階の入院患者さんを2階へ搬送して一夜を明かしました。 当院は、海岸からの距離が1q未満、海抜8〜9mの地にあり、2階建てが2棟、3階建てが1棟、 4階建てが1棟という昔ながらの平地近接の多病棟で、外吹く風を頬に感じながら、渡り廊下を使って病棟間を移動します。
現在、一般病棟60床、障害者病棟60床、医療療養病棟60床が稼働しています。 この昔ながらの病院は、それなりにいい雰囲気ですが、大震災を経験して、安全を確保するために堅 牢な高層建物にする必要を痛感しました。
そんな折、8月末に徳田虎雄・徳洲会理事長から建て替えの了承を得た際、「早急に具体的な計画を立てるように」との指示をいただきました。
私は、平成20年10月に院長に就任し、早や3年が経過しました。この間、常勤医の退職で精神科病棟を閉じました。新規の事業としては、3年前に入院透 析、1年前には薬物中毒離脱後の社会復帰プログラムを開始しました。これは、先週の直言に詳しく記載されていますように、ダルク(DARC)と共同 して行う事業です。今年は、MRIを新機種に切り替え、電子カルテを導入。皆さんのおかげで、暗いトンネルを抜け、少し明るい光を感じることができる ようになったのです。
経営的にも増収増益傾向にあり、小規模から中規模の病院へと変わろうとしています。今年、当院は開設120周年を迎えました。それを記念して、諏訪中 央病院の「鎌田實」名誉院長の講演会や記念誌を刊行します。120周年への思いは、「120年分のありがとう 〜つなぐココロとつなげるチカラ〜」の病院祭 スローガンに込められています。
今世紀、奈良の薬師寺の大講堂が建て替えられました。その際、今後の1000年を耐えるために、千年杉の心柱が使われました。私たちも120周年記 念を、過去を振り返るだけではなく、今一度、礎に基づくという意味で捉えています。
当院の組織、規則、情報伝達の現状をくまなく検証し、改めるべきは改め、中身を充実させます。個々の部署が病院全体の中で必要か、患者さんへの対応 で部署間の役割分担や連絡に漏れがないか見直したいと思います。これが120年後を見据えた、当院の”心柱”の建て替えになると思うからです。
職員全員にお願いしていることがいくつかありますが、その一つが「1日3タッチ運動」です。毎日、自分とほかの職員と患者さん、この3者にタッチし ましょうというものです。日々少しずつ自分を向上させ、職員や患者さんのためになることをするという意味です。笑顔での応対や、声かけでも十分です。
患者さんやご家族にもお願いがあります。ひと言の「ありがとう」と、ご意見箱への1通の建設的な投書です。それが、病院の中身を変えていきます。
金魚ではなくて、ドジョウだから日本のトップリーダーになりました、と野田総理は言いました。癖がなく、目立たないという意味なら、ついに政治も萎 縮政治になったということでしょう。決して褒めようとはしない国民と、批判的論調だけで報道するジャーナリズムによって、日本の総理はきわめて短命 になりました。政治とともに、学校からは「金八先生」が、病院からは個性的な「赤ひげ医者」がいなくなり、萎縮教育、萎縮医療に陥っています。果たして これでいいのでしょうか。
普通のことをすれば感謝された時代から、最善のことをしても当たり前と、さらに要求される時代になりました。上手に褒め、素直に感謝して日本の教育、 医療、政治に自由な活力を取り戻したいものです。国のリーダーが、原稿を見ずに笑顔で私たちに語りかけるような日本に戻すことが大切です。
あらためて館山病院が、120周年をどのように迎えるべきなのか考えてみました。
まず、建て替えの前に経営の基盤を固めるために、社会医療法人を目指します。次に、地域 病院として、2次救急までは安心して任せてもらえる医療体制を整えます。もちろん、これまでどおり、急性期入院から安心 の在宅療養まで一貫した医療ケアを提供できる病院であり続けます。そして、どうしたら患者さんが快適な気持ちで過ごせるサービスを実現できるのかを追 求したいと思います。そのために当院では、「二重の説明とオプションマニュアル」を備えることを目標にします。
疲れて不安な患者さんは、ほっとする言葉と、具体的で安心できる指示の両方を望んでいます。医療者には、感謝や歓待を示す丁寧な挨拶に続けて、親身 でわかりやすい具体的指示を伝えることが大切で、紋切り型のマニュアルだけでは不十分です。個々の患者さんにふさわしい対応を明示したオプションマニュアル作りに努めます。
アメリカの大型スーパーでは、「1〜3 ITEMS」と表示したレジを設け、3つまでの商品を購入する人と、1週間分の買いだめをする人と同じ列に並ばずにすむようになっていました。
当院では、目下、外来患者待ちラインの細分化、送迎バス付きの医療講演、「これ以上待てない」新患の方には後日初診オンタイム予約診優先など、各部門でアイデアが集まっています。
病院の「あるべきようは」(明恵上人の言葉)、スクラップ・アンド・ビルドではなく完成品の維持です。それには、病院祭のスローガンにもあるよう に、感謝というよき日本文化を継承し、つなぐ心をもつ職員が、つなげる能力を駆使して最善の医療を追求していくべきです。皆で頑張りましょう。